令和6年1月1日に発生した能登半島地震により亡くなられた方々のご冥福を心からお祈り申し上げます。また、家屋の倒壊や水道、電気、インフラ施設等の甚大な被害に見舞われ厳しい生活をされている被災者の方々に心からお見舞い申し上げます。
被災者の救済と復興支援にご尽力されている方々に深く敬意を表するとともに、被災地域の皆様の安全と、一日も早い復旧、復興をお祈り申し上げます。
はじめに
本日、令和6年第1回与論町議会定例会の開会にあたり、新年度における町政運営の基本的方針及び当初予算の概要等について申し上げ、町議会議員並びに町民の皆様のご理解ご協力を賜りたいと存じます。
昨年、与論町の少子高齢化の現状をはじめとした、地域社会が直面している課題に大きな危機感を抱き、この与論島の未来を生きる世代に、より良いかたちで残したい、そのために人々がお互いに力を合わせながら、大きくチャレンジできる島づくりの一助になれればとの思いから、与論町長選挙に立候補いたしました。ありがたくも町民の皆様から温かいご支援と信任を賜り、与論町長としての重責を深く受け止め、町民の皆様とともに安心・安全で住みやすい町づくりに全力で取り組んでまいりたいと思います。
世界を見渡すと、今もなお続くロシアによるウクライナ侵攻と対ロ経済制裁による世界経済の低迷が続き、更には中東情勢の不安定により海上輸送による物流の停滞は、円安とともに輸入品が値上がりしエネルギーや食料など生活必需品の高騰が家計や地域経済に大きな影響を与えています。
一方で、島内においては担い手不足による産業の衰退や社会機能の低下、この島にしかない環境や文化の消滅の危機など、進行する少子高齢化等の深刻な課題が多く存在している現状にあります。中でも本町の出生数は平成26年の51人を境として、それ以降50人を下回る出生数となり、近年は30人前後と減少が続き、より一層深刻さを増しています。これらの出生数及び若年層の人口減少は、この島の暮らしの存続を直接的に脅かす重要な問題であるとともに、国の政策においてもその対応が重要性を増している深刻な課題であります。
こうした少子高齢化や人口減少対策を、他の自治体の事例や国・県の施策動向を十分に収集、検討し状況に即した最適な対策を講じる必要があります。そのために官民連携しながら新しい感性や大胆な発想アイデアを積極的に取り入れ課題解決を図り、活力に満ちた島づくりを目指したいと考えております。
現在、第6次与論町総合振興計画第1期(R4~R5年度)に係る評価及び第2期(R6~R8年度)に向けた見直し作業を進めております。私は、与論町第6次総合振興計画「想いどぅ力・あなたの想いが島の力になる」を基本理念に、「島に対岸はない」と考え、今を生きる私たち全てが自分ごととして受け止め、お互いが持つ島の想いや提案、要望に耳を傾け合いながらより良い与論の未来に向けた取り組みを選択し実践してまいります。
第1点目は「未来へ繋ぐ:10年後、飛躍する島づくり」、第2点目が「今を豊かに:安心して暮らせる仕組みづくり」、第3点目が「宝を守る:ここにしかない伝統と自然を次世代に繋ぐ地域づくりと教育の推進」であります。この3つを柱として政策の実現に向けて取り組んでまいります。
第Ⅰ 未来へ繋ぐ:10年後、飛躍する島づくり
はじめに「未来へ繋ぐ:10年後、飛躍する島づくり」について申し上げます。
1子育て政策
喫緊の課題である出生数の増加に向けた対策として次のとおり出産及び子育て応援施策等の強化に取り組みます。
➀「子育て支援対策」
まず、本町における少子化・子育て支援に関する施策の検討及び推進を担う「こども未来推進室」を設置し当事者である子育て世代や各支援団体等と連携しニーズや意見を幅広く収集し政策の錬磨を図ります。また、妊娠、出産、子育て支援に関する情報を分かりやすく取りまとめた「子育て支援ハンドブック(仮称)」等の作成を行い子育て支援に係る情報提供の充実を図ります。
➁「子ども医療費の無料化」
18歳までの子ども医療費の自己負担分を住民税課税世帯についても非課税世帯と同様に全額助成するとともに、課税世帯に対する現物給付方式の導入を推進します。
③「通院旅費補助事業の創設」
鹿児島県の令和6年度からの新規事業を活用し、島外の医療機関に通院・入院が必要な子どもに係る通院旅費補助事業を創設します。
④「安心して妊娠出産できる環境づくり」
妊娠期から子育て期において切れ目のない支援を行うため、子育て世代包括支援センターの運営を行う中で、産前産後サポート事業を実施し、妊娠時、出産時に出産・子育て応援補助金を支給いたします。その他にも、島外における妊婦健診・出産の際の宿泊費及び交通費に対する公費助成制度の実施、妊婦健診に対する公費助成の実施、医療支援を必要とする乳児に対する養育医療費の給付や島外での特定不妊治療を受診する際の宿泊費及び交通費に対しての離島地域不妊治療支援事業による公費助成の実施を引続き行います。
➄「地域ぐるみの子育て支援体制の充実」
子どもが安心して過ごせる居場所づくりとして「子ども第三の居場所」等の整備を推進してまいります。
⑥「かごしま出会いサポートセンターの利用促進」
若者の出会い支援や結婚相談を行っている「かごしま出会いサポートセンター」の利用促進や広報の強化を図ります。
⑦「こども家庭センターの設置」
現在、保健センターに設置されている「子育て世代包括支援センター」をステップアップし、妊産婦、子育て世帯、子どもが気軽に相談できる子育て世帯の身近な相談機関となる「こども家庭センター」の設置に向けた準備を進めます。
第Ⅱ 今を豊かに:安心して暮らせる仕組みづくり
つづいて2点目の「今を豊かに:安心して暮らせる仕組みづくり」について申し上げます。内容としましては、持続的に稼ぐ島づくり、健康づくりの推進、くらしを守る対策についてです。
1持続的に稼ぐ島づくり
1つめに「商工・観光分野」として持続可能な観光地づくりです。
まずは、「商工分野」の新しい「稼ぐ力」の創出であります。町内で新しいビジネスチャンスを活かし持続的に稼ぐ力を創出するため、新たに設立した創業支援協議会を通じて、創業前の機運醸成から創業後の経営支援に至るまでの支援体制を充実させ、新規創業者の確保・育成に努めてまいります。
また、ヨロン島観光協会のワンストップ支援体制の強化を図り、商工観光事業者等が安心して特産品開発や販売に取り組める環境を充実させるとともに、飲食店や宿泊施設等における地元産品の利用促進やメニュー開発支援等により観光地としての「食」の魅力化と島内産業への経済波及の最大化に努めます。
つぎに、「観光分野」では国際基準(GSTC)に基づく持続可能な観光地づくりであります。島の「社会経済」「文化」「環境」の持続性に配慮しつつ、推進組織であるヨロン島観光協会等と連携して、観光を通じた地域経済への波及効果の最大化をめざして以下のことに取り組んでまいります。
➀推進主体となるヨロン島観光協会の自立とDMO化に向けた体制強化や自主財源の確保等の重点支援を引き続き実施してまいります。
➁GSTC(持続可能な観光の国際基準)に基づき策定した観光客や観光事業者向けのガイドライン等の普及・推進を図るとともに、ハード面においても観光庁事業や奄美群島成長戦略推進交付金等を活用し、前述のガイドラインや新しい観光ニーズに対応するための観光施設の改修等の事業者支援に取り組んでまいります。
③美しい海や星空の他、食や産業、歴史文化、島人との交流などといった「ありのままの島の日常」を活かした観光コンテンツの造成と運用体制の強化に取り組み、周年を通じた誘客と滞在日数や消費額の増加に努めてまいります。
④サザンクロスセンターやゆんぬ体験館の魅力化や、新たに大金久海岸に整備予定の渚の交番と周辺施設の指定管理委託を進めることにより、民間の活力も活用した魅力と賑わいのある観光拠点の整備に努めてまいります。
➄大型テーマパークの開業が予定されている沖縄北部の自治体や交通事業者等との連携を強化・拡充し、広域連携による誘客と効果的な情報発信につとめてまいります。
⑥宿泊データ集計分析システム等を活用した観光データの収集・活用のほか、インフルエンサーやリピーターとも連携し効率的・効果的な情報収集や情報発信に努めてまいります。
最後に、持続的な観光の推進に必要な安定財源を確保するため、観光事業者が一体となった「旅先納税」の推進や法定外目的税等の新たな観光財源の導入についてもあわせて検討を進めてまいります。
2つめに「農水産業分野」として、商品の高付加価値化及び生産コスト圧縮による生産性の向上を図り、農水産業従事者の所得向上を推進してまいります。
➀農業の振興
日本の農業を取り巻く環境は、長引く不安定な世界情勢の影響による燃油・資材価格高騰等の影響により、農業全般における生産コストの上昇に加え、消費や流通が大きな変革を迎える中で、生産農家の高齢化等に起因する担い手不足の問題など、これからの農業の在り方についても対応が迫られております。
このような中にあって、本町の農業を取り巻く環境は依然として厳しく予断を許さない状況でありますが、今後の産業振興を見据えた施策の推進にむけた国・県への働きかけや連携を継続し、安定産地としてのブランド化、リレー出荷など「競争力のある強い産地づくり」を目標に、さとうきび、畜産、輸送野菜、花き、果樹を重点品目とする複合経営の推進を継続してまいります。
さとうきび振興につきましては、単収の向上を図るため糖業振興会の助成事業や国・県事業の活用等により、引き続き増産計画に基づく振興策を進めてまいります。
さとうきび経営の基盤強化として、認定農業者・担い手農家の育成や農地情報を有効活用した農地集積等を含めた経営規模拡大に対する支援、生産安定対策として積極的な水利用の推進、堆肥を有効活用した土づくりによる単収向上と適期管理作業等を含めた機械化一貫体系を行える受委託調整組織の設立・運営支援に努めてまいります。
生産技術対策として、単収向上と省力化に向けた栽培技術の実証と普及、地域特性やほ場条件に適した品種の選定及び普及、調苗班の育成、病害虫防除対策を推進してまいります。また、耕畜連携を推進し、限られた農地面積における農地の有効活用と土づくりの推進のため畜産農家と連携した耕畜連携体制の確立に努めます。
畜産の振興につきまして、現在、国内の畜産業においては、長引く景気の悪化や需要の低迷に加え、飼料や資材、燃油などの生産コスト全般の高騰により全国的に経営状況が悪化しており、また、本町においては、離島という更なる条件不利性も加わり、非常に厳しい状態が続いており、農家の生産意欲減退が懸念されております。このことから農家経営の安定を図るための施策を進めるとともに、環境に配慮した畜産環境の整備を行い畜産振興に努めてまいります。
優良飼料作物種子導入助成やかん水器具等購入費一部助成を継続して行い、低コスト飼料の確保と粗飼料自給率の向上を図り、生産コストの低減に努めます。
衛生環境の充実については、堆肥舎や畜舎整備への一部助成及び環境資材導入費の一部助成、敷料供給による畜舎環境の改善を進めるとともに、防疫対策の徹底を進めてまいります。
また、耕地面積の少ない本町における農地の有効活用と良質堆肥による土づくりの推進のため、さとうきび作等耕種農家と連携した耕畜連携の更なる推進に努めます。
次に、園芸の振興につきましては、輸送野菜の生産拡大・品質向上のためのさといも優良種子導入及び自家種芋確保対策、トンネル資材並びにパイプハウス等の園芸施設導入事業等を継続するとともに、生産関連作業委託費等の一部助成、生産技術及び生産体系確立のための各種講習会や研修会等の実施、農林水産物輸送コスト支援事業等による輸送費支援等をおこない園芸農家の経営基盤強化に努めてまいります。
果樹及び特産作物については、生産振興並びに新技術・新品目導入の検討やIPM(総合的病害虫・雑草管理)技術など新たな取組を用いた病害対策の実証と、持続可能な営農体系の構築を図ってまいります。
担い手農家の育成と確保につきましては、担い手農家・認定農業者の所得向上、経営改善を図るための各種研修会を実施するとともに、新規就農者の確保と育成、支援を進めてまいります。
その他、実質化された人・農地プランの推進に向けた地域計画の策定を進め、将来懸念される農業問題の解決に向け、農地の集積集約を図るため各集落における意向調査及び話し合いを実施してまいります。
環境保全型農業の推進につきましては、耕種農業において環境配慮型の技術である太陽熱消毒の普及や低コスト品目品種の検討を重ねるとともに、有機認証農家やエコファーマーの育成及び農林水産物認証取得を推進し、農業生産物の高付加価値化に努めてまいります。
➁水産業の振興
本町の水産業は、漁業者の高齢化や水産資源の減少などの問題に加え、燃油を始めとする漁業活動に係る経費の高騰が漁業者の負担となっております。
これまで主要品目のソデイカや豊漁時期の一斉出漁の際に一時的に氷不足が発生し安定した氷の供給が行えないという問題がありましたが、奄振事業を活用し、製氷能力向上を含めた施設更新を実施し、安定的な氷の供給体制を整えることが出来ました。今後とも漁業活動体制の向上による更なる水産業振興に向けた支援を、与論町漁協をはじめとする水産事業者と緊密に連携を図りながら実施してまいります。
水産資源の持続可能性の確保に係る施策については、継続して実施している国の離島漁業再生支援交付金を活用した事業を推進し、藻場造成など水産資源の回復への取組みを推進してまいります。
水産物の輸送等に係る事業者負担の軽減については、令和6年度より適用範囲が拡充されました農林水産物等輸送コスト支援事業を活用し輸送・流通経費の負担軽減策を実施し、漁家の経営安定及び販路拡大による所得の向上を図ってまいります。
③特産品開発の推進
島内で生産される農畜産物等の資源の有効活用を積極的に推進すると共に、消費拡大と「食」を活用した産業の多角化を図り、観光産業等と連携した商品開発に努めてまいります。
また、原料の確保や販路開拓も重要であることから、原料の生産体制の強化や市場調査などの情報収集など農商工連携による体制作りに取り組み、農水産物の6次産業化による消費拡大と奄振事業等も活用した特産品開発の促進を図るとともに、特産品開発支援センターの活用による事業者育成、加工技術の向上及び商品開発、市場調査や研修会の開催等による生産基盤の確立を進めてまいります。
2健康づくりの推進
➀「健康づくりの推進」
町民の健康づくりに関する長期ビジョン「健康よろん21(第2次与論町民健康づくり計画)」に基づく、健康づくり事業・施策の実施を進めてまいります。
➁「互いに支え合う福祉環境の充実」
高齢者が住み慣れた地域で暮らし続けることができるよう、介護や介護予防、生活支援等を包括的に提供する「地域包括ケアシステム」の構築を図るとともに、事業者だけでなく住民等が参画するような多様なサービスの構築に取り組みます。
また、引き続き敬老バス無料乗車券及びタクシー乗車券による高齢者等の交通弱者支援を行ってまいります。加えて高齢者の保健事業と介護予防等の一体的な事業の実施、すべての地域住民を対象とする包括的支援体制の整備を行っていく重層的支援体制整備事業を進めてまいります。
3くらしを守る対策
➀「水道事業」
水道事業については、人口減少に伴う使用量の減少、老朽施設の更新増加を見越し、公営企業として経営の安定を図るとともに、安全な水道水の安定供給に向けて次のことに取り組んでまいります。
アセットマネジメント・簡易耐震化診断を基にした将来に向けた基本計画の作成を進めます。浄水場の機能維持を図る為にイオン交換膜の洗浄取替・監視システムの更新・淡水化施設の保守点検を行い水質の安定に努めます。有収率の向上のため流量計を活用した流量調査及び漏水調査を進めながら、建設改良工事による老朽管の更新に努めてまいります。
また、下水道事業については、令和6年度からの公営企業への移行に伴い、今までの農業集落排水事業特別会計から下水道事業会計への円滑な移行を進めてまいります。排水処理施設の機能強化対策事業による施設機械更新を進めながら、既存施設の点検整備を図り、放流水質の適正管理による環境保全に努めてまいります。
➁「情報提供・情報共有の推進」
現在、アプリを活用した情報発信の整備を進めております。これにより、避難勧告などの緊急情報やイベントの告知、その他緊急のお知らせなどリアルタイムで大勢の方々が即時に取得できるよう取り組んでまいります。
③「住宅整備の推進」
喫緊の課題である住宅不足解消に向けて、新規の公営住宅整備や空き家改修事業、住宅整備支援補助事業の継続とともに、設計・施工・維持管理運営を一体的に委託することにより事業コストの削減が期待できる官民連携による事業導入など、様々な手法を取り入れながら整備を進めてまいります。
④「防災・災害体制」
台湾有事が緊迫する中、本町の防衛体制は第12普通科連隊国分駐屯地から奄美駐屯地の部隊に管轄が移行することを踏まえ、奄美駐屯地部隊の訓練誘致や沖縄陸上自衛隊、第15旅団との連携をより一層深め、有事の際の対応、災害時の対応の再確認を図ってまいります。
災害対策については、町の総合防災訓練を実施するため令和6年度は令和5年度中に配布する防災マップを活用し自主防災組織や各学校を中心とした津波避難訓練を実施するとともに、低地に居住を置く要援護者の個別避難計画の策定を進めてまいります。
また、B&G財団が展開する「防災拠点の設置および災害相互支援体制構築事業」を活用し、本町での発災時や他市町村での発災時に、現場の対応や派遣人材の育成に取り組んでまいります。
本町の海難時における人命を守るため、事故発生時の対応や連絡体制の確認など平時における各関係事業者の意思の疎通を構築するとともに、水難救済会の組織体制の見直しも図ってまいります。
➄「航路・空港路輸送に係る欠航・抜港・条件付き運航対策」
本町における航路・航空路輸送は、外海離島である本町の社会経済活動を支える生活路線として重要な役割を担っております。航路・航空路輸送における定常運航の向上に向けた対策については、まず町民の皆様のご意見を幅広く伺いながら、鹿児島県及び関係する中央省庁、並びに輸送事業者等と引続き連携しながら、問題の背景にある要因の精査や、航路・航空路それぞれの分野における対策に取り組んでまいります。
第Ⅲ 宝を守る:ここにしかない伝統と自然を次世代に繋ぐ地域づくりと教育の推進
つづいて3点目の「宝を守る:ここにしかない伝統と自然を次世代に繋ぐ地域づくりと教育の推進」について申し上げます。具体的な内容につきましては、景観条例の策定及び未来を担う教育の推進についてであります。
1景観条例の策定
近年、移住者や島外資本による土地取得や住宅・ホテル建設が増加傾向にあり、与論島の美しい景観と文化・風習を損なう恐れがあります。特に、国立公園内海岸隣接地の風光明媚な景勝地に、ホテルや個人の住宅が立ち並ぶと昔ながらの原生林や与論島の財産である美しい景観が失われます。与論町の共有財産である美しい景観を守り次世代の子ども達に残せるよう、与論町景観条例の制定並びに与論町景観計画の策定に向け準備を進めているところであり、令和6年度中に制定したいと考えております。
また、与論町景観計画に即した与論町景観マスタープランを策定し、その中で自然公園内地区と景観重点地区(海岸周辺地域、昔ながらの景観保護地域)及び一般景観保護地区(集落住宅地域、農業振興地域)と商工水産業振興地区(商店街活性化推進地域)等に分け、建築工作物の高さや規模・色・デザイン・植栽等が与論町の景観と調和のとれたまちづくりを目指します。
2教育・文化
本町の教育を推進するうえで、日本国憲法及び教育基本法の理念や学習指導要領の趣旨を踏まえ、県の教育方針、与論町教育大綱に基づきグローバル化、少子高齢化、高度情報化など変化の激しい社会に即応できる能力の伸長を図り、「教育は総合力」という考えのもと、バランスのとれた人間の育成に努めます。
また、「あしたをひらく心豊かでたくましい人づくり」を基本目標とし、「個性が輝き 島が輝く 誠の教育」~最南端は最先端~をキャッチフレーズに「夢や希望をもち、粘り強く学び、困難を乗り越えたくましく生きる人間の育成」を目指す教育を推進し、各学校の自主的な教育活動を支援し、最先端の教育の具現化と発信に努めます。
そのために、教育委員会の活性化を図り、1「豊かな心と健やかな体を育む教育の推進」2「社会の変化に対応し、自立する力を育む教育の推進」3「信頼され、地域とともにある学校づくりの推進」4「地域全体で子どもを守り育てる環境づくりの推進」5「生涯にわたって学べる環境づくりとスポーツ・文化の振興」を重点施策として掲げ、教育行政の充実を図ります。
3豊かな心と健やかな体を育む教育の推進
変化の激しい社会を共に助け合い生き抜いていく上で必要な、他人を思いやる心や感動する心、夢や理想をもち、粘り強く学び続ける人間の育成に努め、豊かな人間性の礎となる体力・気力を醸成する教育を推進します。
4社会の変化に対応できる力を育む教育の推進
子どもたちが変化の激しいこれからの社会に適切に対応して生きるために、主体的・対話的で深い学びを充実させ、学力における基礎・基本を確実に身に付けさせるとともに、自ら学び、主体的に判断・行動し、よりよく問題を解決する能力や表現力を伸ばす教育環境整備を推進します。
特に、与論町の教育の特色である海洋教育については、この島に生まれた子どもたちが、こども園から小中高まで一貫した教育体制の中で地域を支える次世代人材として広く活躍できるよう、従来の海洋教育において取り組まれてきたプログラムを更に強化し地域との連携を推進するとともに、子どもたちの非認知能力を伸ばす教育、教育カリキュラムの魅力化など本町の教育環境の更なる拡充に取り組んでまいります。そのためには小・中・高校の接続と、学校・地域の連携をますます強化し、探求学習の充実を目指します。そして、海洋教育を充実させることによって、与論の子どもたちの自己肯定感や粘り強さ、島を愛する心や社会貢献意欲などを高めていきます。
学力面では、特に、個別指導や自主学習の推進を図り、学習指導要領の趣旨に基づく、学びに向かう力の醸成に努めます。
また、本町で継承されている伝統文化を尊重し、それらを育んできた郷土や国を愛し誇りに思う誠心を養うとともに、望ましい勤労観・職業観を身に付けさせます。
さらに、デジタル教科書やICTを活用し、地理的不利性を解消するとともに、個別最適な学びに応じた教育の推進に努めます。
5信頼される学校づくりの推進
信頼される学校づくりのために、保護者・地域住民から学校教育に対して幅広く意見を聴き、意見交流が行える、開かれた学校づくりを推進します。また、教職員の資質向上に努め学校運営を充実させると共に、PTA活動の活性化を通して保護者・地域との連携を深め、安全・安心な学校づくりを推進します。
新給食センター整備については、PFI等を活用した財源確保の可能性調査を行い基本構想を策定します。
さらに、老朽化した学校施設の整備について対策を進めます。
また、こども園、小学校、中学校、高等学校が連携を緊密にし、幼児教育、学校教育、家庭教育の一貫した取り組みの推進を図るとともに、幼児、児童生徒の健やかな成長を促進するために関係機関との連携を推進します。そして、小中学校の児童・生徒数に伴う学級数減少の歯止めや、中学校・高等学校全学年2学級維持と一人ひとりの進路実現のために、魅力ある学校づくりの推進、与論町ふるさと留学制度の啓発等に努めます。
6地域全体で子どもを守り育てる環境づくりの推進
人づくりは、家庭はもとより、地域が担う役割が大きいものです。
子どもを「島の宝」として地域で育てる風土を生かし、スポーツ、文化活動等にかかわる関係団体・機関、連盟、PTA・子ども会活動の活性化と充実を図り、体育・スポーツ、伝統・文化的な地域行事を通して、地域全体で子どもを守り育てるための取組を推進します。その一つとして、県内でも先駆的な取組として注目されている、与論中学校の部活動の地域移行を一層充実し、学校と地域が連携したスポーツ環境・文化芸術環境づくりを進めます。
7生涯にわたって学べる環境づくりとスポーツ・文化の振興
町民が自己の人格を磨き、豊かな人生を送ることができるよう、生涯にわたって、あらゆる機会にあらゆる場所でスポーツや文化等について学べる環境づくりを目指します。
郷土の伝統文化や文化財を守り育て、様々な芸術に親しむことは、豊かな心の育成や地域創造につながることであり、文化活動の推進、文化財保存・伝承活動の充実に努めます。
与論城跡の国指定に向けた調査事業は、令和5年度で終了しましたが、令和6年度からは調査成果をもとに指定に向けた準備作業を進めてまいります。
予算の編成
次に、令和6年度予算について概要をご説明いたします。
本町の令和6年度一般会計当初予算につきましては、子ども・子育て支援事業、住宅整備事業、道路改良事業、塵芥処理費などの施策に重点化した予算編成となり、対前年度比5.2%増の51億3,151万1千円の規模となっています。
厳しい財政運営が見込まれる状況ではありますが、様々な手段を講じ、歳入の確保に努めるとともに、経常経費の節減対策に努め、併せて事業の見直しと再構築を行い、限られた財源の効果的な活用を図ったところであります。
また、特別会計については、国民健康保険(事業勘定)事業、と畜場、介護保険事業、後期高齢者医療事業の合計で、前年度比9.0%増の15億9,479万円となっております。
水道事業会計については、前年度比2.6%増の1億7,198万5千円、下水道事業会計が5,776万4千円となっております。
これらの、一般会計、特別会計、企業会計を合わせた予算総額は69億5,605万円で前年度に比べて4.8%の増額となっております。
なお、予算編成の過程で生じた財源不足については、財政調整基金から2億448万円を繰入れております。
むすびに
以上、令和6年度の主な施策の概要等について申し上げましたが、「第6次与論町振興計画」における将来像「お互いを知り、学びを深め合う島」、「力を合わせ、チャレンジする島」、 「豊かな自然と暮らしを未来へつなぐ島」の実現に向け、それぞれの分野における各種施策を着実に進め、与論町に関わるすべての皆様が安全で安心して暮らすことができる、そして、与論に住んでみたい、住みつづけたい、子育てをしたいと思っていただけるまちづくりに取り組んでまいります。
町議会をはじめ、町民の皆様方の一層のご理解とご指導・ご鞭撻を衷心より重ねてお願いを申し上げまして、令和6年度の施政方針とさせていただきます。